多くの動物の初期胚発生において重要な働きを持つ母性mRNAの翻訳制御は、遺伝子発現を時空間的に制御する上で重要なステップのひとつである。近年、母性mRNAの翻訳調節にはmRNP構成分子の役割が必要不可欠であることがわかってきたが、脊椎動物のmRNP構成分子、およびそれらの機能については不明な点が多い。本研究では、アフリカツメガエル卵母緬胞のmRNP構成タンパク質を解析し、卵母細胞における母性mRNAの翻訳制御機構を明らかにすることを目的としている。 カエル卵母細胞の貯蔵mRNPを構成する主要なタンパク質のFRGY2は、結合するmRNAの翻訳に関与することが知られている。今年度は、FRGY2を含むmRNP複合体の構成因子としてP100タンパク質を同定し、その機能解析を行った。P100は卵母細胞の細胞質に存在し、未受精卵や初期胚では発現は見られない。また、密度勾配遠心法でmRNP画分に存在し、UV-crosslinkによりRNAと直接結合することから、P100はmRNP構成分子であると考えられた。卵母細胞抽出液からの免疫沈降と質量分析法によって、P100を含む複合体の構成タンパク質を調べたところ、FRGY2の他、Xp54、xRAP55、CPEBなどの、翻訳抑制に関与することが示されているmRNP構成因子が含まれていた。そこで、卵母細胞内にP100を過剰発現させ、翻訳に対するP100の効果を調べたところ、P100は卵母細胞内のグローバルなタンパク質合成は抑制しないが、mRNA特異的に翻訳を抑制する可能性が示唆された。
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