研究概要 |
X,Y性染色体で性決定する雌雄異株植物ヒロハノマンテマ(Silene latifolia)とその近縁種Silene属は、性染色体を持たない両性の植物から性染色体を持つ雌雄異株植物へと進化した。これらの雌雄異株植物の性染色体上に存在する性決定遺伝子を単離することを目的とし、シロイヌナズナの花形態形成遺伝子のヒロハノマンテマホモログを探索した。そのうち、シロイヌナズナの雄蕊と花弁形成に関わるAPETALA3のホモログ、SIAP3X,SIAP3Y遺伝子がヒロハノマンテマのX,Y性染色体上に存在した。SIAP3Yは雄蕊と花弁で、SIAP3Xは花弁のみで発現していたことから、SIAP3Y遺伝子は雄蕊を形成するのに必要な遺伝子と考えられた。Fluorescent in situ hybridization (FISH)により、SIAP3Y,SIAP3X遺伝子の性染色体上での位置をマッピングした。さらに、2つの遺伝子のイントロンを含むゲノム配列を明らかにし、X,Y性染色体間の配列の違いと性染色体上の位置から、ヒロハノマンテマの性染色体がどのように進化したのか考察した。ヒロハノマンテマの近縁種には、性染色体を持たない両性のヒメシラタマソウや雌性両全性異株(ほとんどが両性花だが時々雌花が現れる)のシラタマソウがあるが、それらの近縁種をもちいたゲノミックサザン解析から、Silene属が分岐した後AP3遺伝子が存在する常染色体が性染色体へと変化していったことが推測された(論文投稿中)。
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