研究概要 |
平成19年度は,研究代表者を含む国際調査グループがエチオピアで2006年から2007年にかけて発見した化石大型類人猿であるチョローラピテクスにっいて,大臼歯形状の詳細な三次元分析を実施した.その結果,チョローラピテクス大臼歯は耐摩耗性と切裂き機能を同時に獲得した独特の機能形態を持つことが明らかとなった.このような切裂き機能の発達は現生ゴリラと共通していることから,チョローラピテクスは現生ゴリラに続く系統の化石メンバーである可能性が高く,現生のアフリカ類人猿と人類の分岐年代の再検討の必要性が示された.これらの成果にっいて,8月発行のNature誌上で発表し,また10月の日本人類学会大会において口頭発表した. このような分析の比較対象として,現生類人猿(ゴリラ、チンパンジー、テナガザル)の新たな標本資料についてもマイクロCT撮影を実施し,比較観察用に高精細石膏模型を作成した.すでに得られているデータとあわせて三次元形状分析を進め,上記の切裂き機能や果実食との関連を示すと考えられる特徴などについて,数量的な評価方法をさらに検討した.これにより,上述のゴリラ・チョローラピテクスにおける切裂き機能の発達が数量的に確認されたほか,現生のチンパンジー属2種における共通特長などが明らかとなった. またこうした手法を化石類人猿・人類標本に適用して分析するための準備段階として,既存の化石類人猿・人類大臼歯の内部形状データについて,三次元再構築作業を進めた.中国産類人猿化石標本の分析については,調整の結果,次年度以降に連絡調査を実施することとなった.
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