白粒コムギを栽培する上で問題となる「穂発芽」を回避するため、所有コムギ系統中、発芽抑制効果の高い植物ホルモンアブシジン酸の感受性が最も高いOW104と所有白粒コムギ系統の中で最も種子休眠能力の高いAUS1408の交配後代から種子休眠能力とアブジシン酸感受性で選抜することにより穂発芽耐性白粒コムギの作出を試みた。平成20年度は、前年度のF2系統の選抜により得られた白粒コムギ16系統の中で、白粒コムギ系統の供試親であるAUS1408より種子休眠能力が強い7系統140個体をF_3系統として圃場にて栽培した。同時にOW104×AUS1408のF_2系統189系統と両親2系統、穂発芽耐性評価基準品種10品種を栽培し、合計約5000穂の開花日の調査した。コムギ種子の含水率が20%を切った開花後45日で種子を採種し約1000シャーレ(コムギ種子は1シャーレ当たり10〜20粒供試)に脱塩水をシャーレ1枚当たり6ml入れ、発芽数を調査することで種子休眠能力を評価した。両親2系統と穂発芽耐性評価基準品種5品種は、発芽抑制植物ホルモンであるアブシジン酸や発芽促進植物ホルモンであるジベレリン酸の感受性も同時に調査した。その結果、F_3系統では、穂発芽耐性強品種である北系1354を上回る種子休眠能力を示す個体が分離する3系統を得ることができた。この中の1-117系統は、18個体中15個体が北系1354より種子休眠能力の高い有望系統であった。種子休眠能力の高いコムギ系統の多くが穂発芽耐性も高いことから、これら白粒系統は従来の白粒系統より強い穂発芽耐性を示す可能性が高い。次年度は、得られた種子休眠能力の高い白粒系統の植物ホルモン感受性を詳細に調査する予定である。
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