研究概要 |
以前行った大量EST(Expressed sequence tags)による発現解析により、パンコムギの種子貯蔵タンパク質遺伝子の中で多重遺伝子α/βグリアジンの中に登熟期の発現パターンの異なるものを見出した。まずこれら遺伝子のプロモーター配列の差異を検証するため、α/βグリアジンが座乗する染色体領域の解析を行った。多重遺伝子を区別するPCRプライマーを設計し、PCRによりこれらの座乗する染色体領域を含むパンコムギのBAC(Bacterial artificial chromosome)クローンのスクリーニングを行った。平均して約100kbのα/βグリアジン近傍の染色体DNA断片をもつ42のBACクローンを得ることができた。これらのBACクローンを用いたサザンプロット解析を行い、BACクローンを整列化した。α/βグリアジンの発現パターンやゲノム上の存在様式が特徴的であると判断したBACクローンを選出し、これまでに5クローンの塩基配列解読を完了した。反復配列が多く含まれるため完全解読には及ばなかったが、α/βグリアジン遺伝子の存在様式や遺伝子間の特徴を明らかにすることができた。遺伝子発現パターンと組み合わせた更に詳細な解析が必要となった。また、これまでに種子貯蔵タンパク質遺伝子の登熟期の発現パターンは、EST解析により実験系統Chinese Springにおける開花後0,5,10,20,30日が明らかになっていた。さらに詳細に調査するため、品種Chinese Springおよび農林61号の開花から3日毎の登熟過程の種子をサンプリングし、RT-PCRによる発現解析を行った。さらに、広島県福山市において農林61号およびシラサギコムギのサンプリングを行った。次年度も同様にサンプリングを行う予定であり、登熟期の種子貯蔵タンパク質遺伝子の発現量に影響を及ぼす環境や品種の要因と、プロモーター領域およびゲノム構造との相関を明らかにするデータを揃えることができた。
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