研究課題
リン肥料の投入を減らし環境への負担を抑えた持続的農業を実現するためのイネ育種に向けて、2種類の有用遺伝子の探索を行っている。(1)リン欠乏によって誘導される根の伸長というストレス応答形質(以下、REPとよぶ)については、この形質を持つイネは水耕栽培条件で茎葉部へのリン蓄積量が高まることがわかり、DNAマーカーを用いた形質マッピングにより候補遺伝子を突き止めつつある。そのための精密マッピング用に、インディカ品種"Kasalath"(REPを持つ)の染色体断片をジャポニカ品種"日本晴"(REPを持たない)に導入した染色体部分置換系統(イネゲノム・リソースセンターより提供)を用いたF_2分離集団を作成し表現型および遺伝子型の調査を進めている。19年度には染色体部分置換系統を用いたF_2分離集団の追加調査を行い、染色体6長腕の領域に候補遺伝子を絞り込んだ(現在、論文投稿中)。つまり、数百個体のリン欠乏ストレス、スクリーニングおよびDNA抽出・マーカー解析の系を立ち上げ、精密マッピングを行うことができたので遺伝子単離の実現に近づいたといえる。今後は、マーカーと表現型の組換えから自殖後代種子を選抜し、更なる候補遺伝子の絞込みを行う予定である。(2)リン欠乏ストレスに応答して根の酸性フォスファターゼ(APase)活性が上昇するという形質については、幾つかのイネ品種を用いて評価条件を検討中であり、見出した品種間差の遺伝解析に適した染色体部分置換系統あるいは組換え自殖系統の表現型調査に向けての準備を進めている。またAPase遺伝子発現について、リアルタイムPCRによる発現定量解析を行っている。この形質についてはリン欠乏ストレス誘導性のAPaseの酵素活性上昇および発現上昇は、APase近傍の遺伝子多型によって説明できる状況証拠が整いつつある。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (1件)
Proceedings of the Final International Meeting for 21th Century Center for Excellence (COE) Program "Development of New Bioremediation Systems of Acid Sulfate Soil for Agriculture and Forestry"
ページ: 25-28