リンは必須元素の一つであるが、土壌中で植物が利用できない不可給態になり易く農業生産上の限定要因になる。世界中に広がるリン欠乏土壌に対して、低リン環境に適応した作物が育種できれば、リン肥料の過剰投与を抑制でき持続的な環境保全型農業が可能になる。また、リン吸収効率の高い植物を開発することで、リンの富栄養化した湖沼の環境修復にも応用できるだろう。 植物のストレス応答機構に関する研究は現在盛んに行われているが、リン欠乏ストレスに対する遺伝子および発現遺伝子の解析は始まったばかりである。本研究では、リン欠乏条件のイネで誘導される(1)根の伸長と(2)酸性ホスファターゼ活性上昇、の2つのストレス応答形質に着目し、その遺伝子単離と応答機構の解明を目的とする。後者の形質については酵素活性上昇とリン利用効率との関連を調査しイネゲノムリソースの提供する染色体断片置換系統群(CSSLs)を利用した形質マッピングを行い遺伝子単離に向けた準備とし、先行している前者の形質についてはCSSLと背景親との交雑後代を用いたマップベースクローニングによって遺伝子単離を行なう。
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