本申請研究では、ソバにおいてゲノム情報を利用した高付加価値品種の短期育成体系の確立を目指す。目的達成のため、申請者はソバ属植物遺伝資源より極矮性を示す自殖性普通ソバを単離した。本系統は小スペースで育成可能等、実験モデル系統としての特性を有している。そこで当該年度は、大きく1:極矮性化の原因遺伝子の特定、2:標準遺伝解析集団の育成とDNA連鎖地図作成の研究を実施した。それぞれの成果を以下に記す。 1:極矮性化の原因遺伝子特定 本研究で供試する極矮性系統は、植物体全長が7cm程度と非常に強い矮性を示す。その形態的特徴から、矮性化の原因が植物ホルモンの生合成あるいは受容に関わる変異であることが推測されたため、ブラシノライドとジベレリンに対する反応性を調査した。その結果、本変異体はブラシノステロイドの合成に関わる変異体であると推定され、デオキソカスタステロンからカスタステロン、カスタステロンからブラシノライドを触媒するBRox2(CYP85A)(酵素遺伝子)に変異を有すことを明らかとした。本成果は、ソバ属植物の実験モデル系統作出に寄与するばかりでなく、植物ブラシノステロイド生合成系の解釈にも新たな知見を与えるものである。なお本成果は、論文としても投稿準備中である。 2:標準遺伝解析集団の育成とDNA連鎖地図作成 極矮性系統と適度に多型を示す自殖性系統(420)間に由来するF2集団よりRILsを育成中である。現在までに、自殖4世代目が150系統育成されている。また、DNA連鎖地図もAFLPマーカーを中心にSSRおよび発現遺伝子をベースとしたSNPsマーカーにより作成中である。また、遺伝情報によらない表現型変異の原因であるゲノムのエピジェネティックな変異に関わる遺伝子座の同定にも成功しており、当該遺伝子座のマッピングもあわせて行っている。これらのマーカーを配置したDNA連鎖地図は、ソバのゲノム育種を展開する上で重要農業形質の迅速マッピングに大きく寄与する。
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