研究概要 |
タマネギおよびネギは、重要な野菜の一つであるものの分子遺伝学的研究が遅れている。近年になり、タマネギでは約1.2万のEST配列およびこれらをマーカーとした染色体地図が海外のグループより公開されるとともに、ネギとの種間雑種に由来する単一染色体添加/欠失系統(以下添加/欠失系統)が山口大学で育成されている。一方ネギでは、これまで当所が中心となり1,000以上のSSRを単離し、連鎖地図作成を進めている。本研究では、タマネギとネギのシンテニーを利用して、上記マーカーの座乗染色体を明らかにするとともに、抽苔時期や分げつ性等の有用形質に関する遺伝子座領域を連鎖地図から明らかにする。本年度は、添加/欠失系統を用いて、マーカー座の座乗染色体を特定するとともに、極早抽性「北葱」および晩抽性「長悦」の抽苔性を評価して、抽苔性に関する分離集団を育成した。 まず、添加/欠失系統を用いた座乗染色体を特定するため、両種の交雑親であるネギ「九条」とシャロット「18-5」を用いて、ネギSSRマーカー1199個およびタマネギEST由来マーカー112個による多型を検索した。3%アガロースゲル電気泳動により多型が認められたマーカー407個(ネギSSR 344,タマネギEST 63)について、添加系統および欠失系統を用いて解析した結果、269座の座乗染色体を特定した。このうち230マーカー座については、これまで連鎖地図上の位置は不明であるが、新たに座乗染色体が特定されたマーカーであり、特定の連鎖群への集中マッピングに使用できる。 一方、分げつ性や抽苔性について大きな差異のあるF2集団(「北葱」自殖系統×「長悦」自殖系統および「下仁田」自殖系統×「北葱」自殖系統)について、それぞれ114座および52座の遺伝子型を解析し、連鎖地図を作成した。またF2各個体の自殖後代(F3系統)を圃場で栽培し、抽苔性等の各形質を調査した。
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