研究概要 |
タマネギおよびネギは、重要な野菜の一つであるものの分子遺伝学的研究が遅れている。近年になり、タマネギでは約1.2万のEST配列およびこれらをマーカーとした染色体地図が海外のグループより公開されるとともに、ネギとの種間雑種に由来する単一染色体添加/欠失系統(以下添加/欠失系統)が山口大学で育成されている。一方ネギでは、これまで当所が中心となり1,000以上のSSRを単離し、連鎖地図作成を進めている。本研究では、タマネギとネギのシンテニーを利用して、上記マーカーの座乗染色体を明らかにするとともに、抽苔時期や分げつ性等の有用形質に関する遺伝子座領域を連鎖地図から明らかにする。本年度は、昨年度に引き続き添加/欠失系統を用いて、マーカー座の座乗染色体を特定するとともに、極早抽性(不時抽苔性)「北葱」および晩抽性「長悦」の抽苔性を評価して、抽苔性に関する遺伝解析を行った。 まず、添加/欠失系統を用いた座乗染色体を特定するため、両種の交雑親であるネギ「九条」とシヤロット「18-5」を用いて、タマネギEST由来マーカー261個による多型を検索した。DNAシーケンサーによるフラグメント解析およびシーケンスにより146座で多型が認められた。これらのマーカーを添加系統および欠失系統を用いて解析した結果、昨年度の結果と合わせて351座の座乗染色体を特定し、既に連鎖地図に位置付けられているマーカー座と合わせて合計605マーカーの座乗染色体が明らかとなった。 一方、抽苔性について大きな差異のあるF2集団(「北葱」自殖系統×「長悦」自殖系統)について、それぞれ142マーカーからなる連鎖地図を作成するとともに、「北葱」の不時抽苔性に関する主要なQTLを見出した。
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