研究概要 |
乾燥地では,近い将来に水資源減少・食料不足がともに加速すると予測されており,これらの問題に対処することが世界的な急務の課題となっている.しかし,これまで行われてきた耐乾性品種の開発や灌漉設備の設置は技術的・経済的な問題のため,いまだ有効な解決策に成り得ていない.そこで申請者は作物の水消費量を抑えることによる水資源保全と水欠乏下での作物生産性の増大を両立させる,極めて簡便かつ安価な栽培学的手法を考案した.具体的には,作物の下位葉を切除(以下,切葉処理)することで蒸散量を削減させ,土壌中に残存した水を長期に渡って上位葉に集中させて光合成能力を高め,少ない葉でむしろ高いバイオマス・子実生産を達成するというアイデアである.本研究では,圃場およびポットの異なる土壌水分条件下で栽培したソルガムに対して,様々な生育段階や強度で切葉処理を行い,それが収量に及ぼす影響を検証するとともに,収量に関与する要因を明らかにすることを目的とした. その結果,土壌乾燥ストレス条件下において穂ばらみ期に切葉処理を行うと子実収量が増加し,その効果は土壌水分量と切葉強度の影響を受けることが明らかとなった.また,切葉処理によって子実収量が増大する要因として,1.上位葉の気孔コンダクタンスが高くなり光合成速度が増加すること,2.登熟期の同化速度が増大し,多くの同化産物が穂へ分配されること,3.不稔が軽減されることでシンク容量が維持されること,が関与していると考えられた.しかしながら仮説とは異なり,切葉処理による葉身の水状態の向上や吸水量の減少は認められなかった.今後は切葉処理の効果を実際の乾燥地において検証するトとともに,切葉処理から子実生産増加に至るプロセスについてより詳細な解明を行う.
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