植物の種多様性と生産性や安定性との間には正の相関関係があることが示されている。本研究では、種多様性の高い植生に見られる現象を緑肥作物栽培に応用し、混作で栽培することによるバイオマス増加効果の検証、およびそのメカニズムの解析を行った。 供試作物として、マメ科植物、C4植物、C3植物からそれぞれ播種時期が同じで乾物収量が多く、アレロパシー効果の影響の少ないクロタラリア、ソルガム、ヒマワリを選定した。処理として、3種それぞれの単作、2種ずつの組み合わせの混作、および3種類の混作の計7種類の作付け区を設け、3反復、2作期(夏作、秋作)でその生育と収量を調査した。また、それぞれの区画内に38Lの不織布ポットを埋め、生育途中で掘りあげて種毎に異なる色の染色液を注入することで根を染め分け、深さ別の種毎の根域分布の解析を行なった。 地上部バイオマスは、単作にくらべて混作で夏作、秋作ともに有意に増加した。構成種ごとにバイオマスの推移を解析したところ、必ずしもすべての種が混作によって大きくなっているわけではなく、組み合わせによって単作よりも大きくなる種と小さくなる種が混在していた。地下部も同様に、単作に比べて混作でバイオマスが増加した。深さ別に解析を行った結果、ソルガムの単・混作の処理と深さの間に交互作用が有意に検出された。すなわち、ソルガムでは単作の場合には深くなるにつれて根の量が減少するが、混作にすると深さ20cm以降の根量が増加する傾向が見られた。 これらの結果、および生育前期と後期それぞれの生長解析の結果から、混作による増収要因は、混作による群落の光条件やバイオマスの分配割合の変化、あるいは構成種それぞれのバイオマスの増加ではなく、混作条件で他種よりも有利な種のバイオマス増加に起因する可能性が示唆された。
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