研究概要 |
平成19年度は,子実のカドミウム濃度が「高」と「低」と評価した品種を水田輪換畑圃場とポットで栽培し,越冬前の幼植物体における部位別のカドミウムの吸収量を調査し,地下部から地上部への移行程度についても検討した. 圃場試験では播種後62日目,ポット試験では37日目に茎葉部と根部を採集し,60℃で7日間乾燥させた後粉砕した.カドミウム濃度の測定は,試料100mgに0.1M硝酸20mLを加えて振とう抽出・ろ過した後,ICP-MS (ELAN6100DRC, Perkin Elmer Instruments)を用いて行った. 圃場試験における器官別のカドミウム濃度とカドミウム含有量には茎部と葉身部で有意な品種間差異が認められ,子実カドミウム濃度の低い「きたほなみ」と「ナンブコムギ」は子実カドミウム濃度の高い「ニシカゼコムギ」や「キタカミコムギ」と比較して,茎葉部におけるカドミウム濃度とカドミウム含有量が低かった.ポット試験では根部と茎葉部のカドミウム濃度とカドミウム含有量に有意な品種間差異が認められ,圃場試験の結果と同様に,「きたほなみ」が「ニシカゼコムギ」と比較して低い値を示した.カドミウム濃度と含有量の地上部/地下部比をみたところ,「きたほなみ」と「ナンブコムギ」は「ニシカゼコムギ」や「キタカミコムギ」と比較して低い傾向が示された. 以上の結果から,子実カドミウム濃度の低い「きたほなみ」や「ナンブコムギ」は子実カドミウム濃度の高い「ニシカゼコムギ」や「キタカミコムギ」と比較して,幼苗でのカドミウムの吸収量と地下部から地上部への移行程度が少ないことが示された.
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