研究概要 |
コムギの幼植物体でのカドミウムの吸収性と根系形態との関係を解析するため,コムギ品種'ニシカゼコムギ(幼植物体のカドミウム吸収性:高)','キタカミコムギ(高)','ナンブコムギ(低)'および'きたほなみ(低)'をアクリル製の根箱(50×50×1.5cm)で栽培し,播種後39,73,93日目(DAS)に,アクリル板上で確認できる根数頻度(本cm^<-1>)を計測した.73DASと93DASには植物体を回収し,地上部と地下部のカドミウム濃度をICP-MSにて測定した.73DASには,最伸種子根上の側根密度も算出した. 根数頻度は全調査日において,ニシカゼコムギとキタカミコムギがきたほなみとナンブコムギよりも高い値を示した.73DASの側根密度も,ニシカゼコムギとキタカミコムギが他2品種よりも高い値を示した.地上部のカドミウム濃度,カドミウム含有量およびカドミウムの地下部から地上部への移行性は,73DASと97DASいずれもニシカゼコムギとキタカミコムギが他2品種よりも高かった. 以上のように,幼植物体でのカドミウムの吸収性が高いニシカゼコムギやキタカミコムギは,吸収性が低いナンブコムギやきたほなみと比べて,生育初期の側根の発生と伸長が旺盛であることが示された.ミネラルは主に根端部から吸収されること,また,根端部からの分泌物がミネラルを可溶化して根からの吸収を促進することなどから,ニシカゼコムギやキタカミコムギの生育初期からの旺盛な側根の発達が幼植物体におけるカドミウムの吸収と関係している可能性が示唆された.
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