地球温暖化が引き起こす、休眠打破の不良や不時開花などの問題解決を目的に新規の栽培技術「ジョイント整枝法」を応用し、落葉果樹における自発休眠覚醒の制御機構に関して既存の方法とは異なったアプローチを試みた。 休眠打破剤(シアナミド)による休眠打破への影響について、直接処理を行う樹に加え、ジョイント仕立てにより、隣接樹と養水分の通導が行われる接ぎ木された個体に及ぼされる影響について調査を行った。ニホンナシ'幸水'の自発休眠打破に必要とされる休眠要求量の約75%である600CHの低温に遭遇させた実験樹に、休眠打破剤による処理を行った樹においては明らかに萌芽が促進されており、その効果は花芽において顕著であった。先端樹のみに打破剤を処理したユニットにおいて、直接は打破処理を行っていない連結された基部樹の花芽の萌芽が遅延する傾向があり、すでに休眠打破された樹による連結された樹への影響が認められた。一方、同一樹の葉芽に関しては反対に萌芽が促進されており、花芽と葉芽では異なった休眠製御機構が存在すると考えられる。なお基部側の樹のみ打破処理を行った場合、先端部への影響はあまり認められなかったため、連結の方向による極性があるものと考えられる。また、同じバラ科のモモ'勘助白桃'において芽内の水の動態把握の目的で、花芽内部の組織ごとの水チャネルの遺伝子発現パターンを調査したところ、PIP1は自発休眠打破後、休眠芽基部におい芽上部よりも先に発現量の増加が見られ、着生する枝から休眠芽下部へ、水の移動がしやすい状態になっていることが示唆された。次年度にはニホンナシにおいて同様の解析を行いたい。また、冬季のニホンナシ芽中の糖の解析を行ったところ、主要な糖はソルビトールとスクロースであり、休眠覚醒から萌芽までに、それまでに蓄積された含量が減少していくことが認められた。
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