研究概要 |
本年度に得られた成果は以下の通りである. 1, cDNAサブトラクション法を用い,開花前後のアサガオ花弁で差次的な発現を示す複数の遺伝子を新たに向定した.それらの遺伝子についてReal-time RT-PCR法により詳細な発現解析を行い,各遺伝子が開花後の老化花弁において特定の時期に特定のレベルで発現していることを明らかにした. 2,サクラやデルフィニウムでは,脱離後の老化花弁でプログラム細胞死(PCD)の特徴であるDNAや核の断片化が生じないことを確認し,花弁老化にPCDが関与しないことを明らかにした.また,その老化花弁でこれまでに報告のない新たな形態的変化を示す核の崩壊現象を確認した. 3,アサガオ花弁の色素合成に関わるアントシアニジン合成酵素(ANS)遺伝子の発現を抑制するためのRNAiベクター(pH7-ANS)を構築した.このベクターを導入したアサガオ形質転換体の花弁について,MS遺伝子の発現抑制やアントシアニン含量の減少,花弁の白色化を確認し,アサガオ花弁でもRNAiによる遺伝子発現の抑制が可能であることを証明した. 4,アサガオの老化花弁で発現量が増加する液胞プロセシング酵素(VPE)遺伝子の発現を抑制するためのRNAiベクター(pH7-VPE)を構築した.このベクターを導入したアサガオ形質転換体の花弁について,導入遺伝子の確認と花冠面積の変化を調査し,VPE遺伝子が花弁老化の誘導に関与することを示唆する結果を得た. 今後は,アサガオの老化花弁で発現量が増加する他の複数の遺伝子について,各遺伝子の発現を抑制するためのRNAiベクターを構築する.また,そのベクターを導入したアサガオ形質転換体について,導入遺伝子の有無や発現量の変化,花冠面積の変化などを調査し,各遺伝子の発現抑制が花弁老化に及ぼす影響を明らかにする予定である.
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