研究概要 |
温帯果樹のライフサイクルにおいて、一般に秋から早春期は休眠期間と考えられている。温暖期に分化した芽は秋季に生長を停止し、休眠した状態で越冬し、一定期間の低温に遭遇してはじめて生長を再開する。生長に好適な条件においても萌芽しない自発休眠芽は、一定量の低温に遭遇することにより萌芽可能な状態に移行する。本研究の目的は、自発休眠を制御する転写因子の探索である。 平成19年度、温帯果樹であるウメを供試し、サブトラクション法を用いて、自発休眠期でより特異的に発現量が多い遺伝子をスクリーニングしていった結果、StMADS11タイプのMADS-box遺伝子が自発休眠期で高発現していることをつきとめた。今年度は、得られた遺伝子のゲノム構造を解析するにあたって、ウメ'南高'よりゲノムライブラリーを作製して約60kbにわたる領域の塩基配列をショットガンシークエンス法により決定したところ、6つのStMADS11タイプのMADS-box遺伝子(PmDAM1-6)がタンデムリピートでウメゲノム上に存在することを明らかにした。次に、ウメを供試して、PmDAM1-6遺伝子め発現パターンと休眠サイクルの季節的変動との関係を検証するため、多低温要求性系統と少低温要求性系統を用いて調査した。しその結果、ウメPmDAM5、6遺伝子は乱自発休眠期に高発現し、休眠覚醒にともなって発現量が低下することが示された。次に、ウメPmDAM5、6遺伝子の自発休眠覚醒時における発現量の低下と低温遭遇との関連性を明らかにするため、自発休眠覚醒期である11-1月の日長条件下(9時間日長)で人工的な低温処理を施して、発現量の変動を調査した,その結果、ウメPmDAM5、6遺伝子のうち、PnDAM6遺伝子がより低温積算に対して敏感に反応し、休眠覚醒との相関もより密接であった。 以上の結果より、StMADS11タイプに属するMADS-box遺伝子である、ウメPmDAM6遺伝子が自発休眠制御により深く関与している可能性が示された。
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