研究概要 |
本研究は都市の三次元的景観構造と鳥類の分布との関係について明らかにすることを目的とし, 低層住宅地と高層ビル街における緑の分布形態および三次元的景観構造の違いがなわばりを形成する樹林性鳥類の営巣分布に及ぼす影響を調査した. 急激に都市化の進む中華人民共和国北京市内の高層ビル街および胡同と呼ばれる低層住宅地を調査対象地とし, 2008年3月に市街地でも繁殖しているカラス科の鳥類であるカササギとオナガの営巣分布調査を行い, カササギの巣186個, オナガの巣13個の位置および営巣木の特徴(樹種樹高, 巣の高さ等)を記録した. そして, 2008年5月に2番いのカササギの行動調査を行った. また, ALOS(だいち)衛星画像から調査対象地区の緑被分布図およびDSM(デジタル地表高モデル)からなる都市の三次元景観構造図の作成した. カササギの巣とランダムに選んだ巣から50m以上離れた樹木との間で周囲の環境を比較したところ, ランダムに選んだ樹木の周辺よりも巣の周辺の方が半径200m以内の樹木面積が大きく, 逆に高層建築物の面積が小さかった. 営巣中のカササギの行動調査の結果, 高層ビル街の番いの方が低層住宅地の番いよりも広い行動圏(最外郭法)を持ち, 行動圏内に含まれる樹木面積も多かった. しかし, 実際には行動圏内の全ての樹木を利用できてはいなかった. 高層ビル街のカササギは, 多くの樹木が見える場所かっ巣が見える高層建築物の屋根に好んで止まっていた. 都市に棲む烏類であるカササギの営巣場所や行動圏は高層ビルによる負の影響を受けているが, 逆に見張りのしやすい高層建築物の上を上手く使いながら繁殖できる立地条件があることも伺えた.
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