研究概要 |
1) 果菜類における養液栽培の完全閉鎖型培養液管理方法の確立のため、循環式 (EC値設定による培養液管理、培養液の減少分のみの追加、培養液が少なくなったときにすべて更新する3処理区) とかけ流し式における培養液管理方法を用いたナスの比較栽培を行った。培養液の分析ではEC区では窒素含有量は一定して推移したが、追加区では5月中旬〜6月では窒素が大幅に減少し、7月以降は吸収するよりも残留量が多くなり、EC値も上昇した。かけ流し式と循環型で収量や品質には大きな差異はみられなかったことから、培養液管理が安易な排液を出さないEC値を基準とした循環式が有効である。 2) 肥料流亡試験においてワグネルポットに山土と砂、堆肥を異なる割合で混合後、種々の化成肥料もしくは有機配合肥料、有機肥料を施与し毎日灌水を行い、排液の分析を定期的に行った。その結果、肥料の種類によってN、P、K、Ca、Mgの流亡のしやすさが異なり、また砂壌土においても高い結果となったが、無施肥においても堆肥から流亡する腐植物や微量の肥料成分が認められた。 3) 生理障害発生要因の解明と対策について、水耕トマト栽培で培養液にK, CaおよびMg塩を添加し, 果実品質と尻腐れ果の発生および収量に及ぼす影響について検討した結果、平均果実重および収量は基本培養液区で最も高くCaCl_2区で最も低くなった. 尻腐れは'ハウス桃太郎'および'シシリアンルージュ'ではK/Caが高い区で, '朝日和10'では低い区で, それぞれ多発した. 糖度は全ての品種でCaCl_2区が最も高くなった. 一方, 果実内のCa含有率は果頂部に近いほど減少し, 尻腐れ果は正常果の10%以下となった. Mgは果実肥大の抑制および尻腐れ果発生を助長する一方で, 果実品質の向上効果も高いが, Ca濃度を高めることによりMgの正の効果を失わずに負の効果を抑えることができると示唆された.
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