研究概要 |
本年度は, 二次的自然の環境保全機能の評価手法の開発についてはデータの特性を把握し, 二次的自然の管理政策の現状については, ため池の管理組織形態と存続をめぐる費用負担の実態と首都圏の農地保全政策の歴史を明らかにした. これらの結果を踏まえて, 日本を含むアジア都市圏の二次的自然の保全政策の方向性について検討した. 二次的自然の環境保全機能の評価に用いるデータの特性の把握にあたっては, 神社の緑地環境を対象とした. 取り上げた理由は, 神社の緑地環境自身が観光レクリエーション機能を発揮するばかりでなく, その周りにある森林など周囲にある緑地環境の観光レクリエーション機能の発揮にも役立っていることが多いことによる1今回は, 長崎県長崎市の緑地環境を対象に, その特徴を明らかにし, それらが立地する環境の特性を明らかにした. その結果, (1) 神社の緑地環境は, 面積規模、緑被率、施設内容の3つの指標から、8つに分類され, (2) 大規模緑被卓越型の神社は山地・火山地に、小規模空地卓越型の神社は低地に多く立地していたことなどが明らかにされた. ため池の管理組織形態と存続をめぐる費用負担の実態については, 兵庫県東播磨地域のため池を対象に, 主にヒアリングから明らかにした・その結果, ため池の管理組織形態は, ため池の地理的条件と都市化の程度によって異なっていることや維持管理に生じる費用負担には, 池の点検等に生じる日常的な費用負担と, 大規模な改修工事にともなう非日常的な地元負担があることが明らかにされた. 首都圏の農地保全政策の歴史については, 第二次世界大戦中(1940年代前半)から現在までを対象とし, 従来あまり取り上げられなかった市区レベルの農地保全政策の歴史を明らかにした. これらの結果をもとに, アジア都市圏の二次的自然保全にあたっては, アメリカ・ドイツ等に起源を持つゾーニングに変わる地域特性を踏まえた新たな保全政策を構築する必要を述べた.
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