森林浴の心理的効果およびパーソナリティ(個人的背景)を調べるアンケートを実施し、統計的手法を用いて森林浴効果-パーソナリティの相互の数量的な分析をおこなうことで、パーソナリティに配慮した、癒し効果の高い森林浴空間の設計やプログラムの策定に寄与することを研究目的とした。 平成21年度はプロフィールアンケート、およびThompson and Barton Scaletest、GSES、Neo-FFIなどのパーソナリティ指標とPOMSによって示された森林浴の癒し効果との関係を分析した。その結果、特に、森林浴は神経症気質が高く外向性や自信の低いタイプの人などに効果的であること、さらに、歩行および座観などの活動プログラムの違いによって、神経性傾向のある群とない群とに癒し効果に差異があることなどが明らかにされた。また、そのような神経性気質がある人たちにより、心理的な疲労感を緩和し、リラックスしてもらうためには、森林の中の座れる場所をできるだけ設けて、ゆったりと森林に浸ってもらうような森林環境の整備が有効であることが提案された。 パーソナリティによって森林浴の効果の一端が異なることを示したという意味で、本課題の功績は大きい。今後は、継続的な研究によってパーソナリティと森林浴効果の生理的効果などの関係が明らかにするなど、さらに科学的なエビデンスが蓄積することで、これまで以上に森林浴が全ての利用者に等しい効果を与えている訳ではないことが、森林の管理者および利用者の双方に理解され、多様なパーソナリティを有する利用者に対して、管理者が狙った効果が柔軟に発揮されるような散策路設計やプログラムの開発に繋がることが期待できる。
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