研究課題
果実の灰熟開始を制御しているLeMADS-RINという転写囚子遺伝子の機能解析を行うと共に、この遺伝子座におけるrin変異の影響によって果実成熟が変化する原因を明らかにすることが本研究の目的である。21年度は変異型の遺伝子がコードする遺伝子産物について機能解析を行った。ゲルシフトアッセイによるタンパク質―DNAの結合性について検討した結果、変異型タンパク質には正常型と同様のDNA結合性が認められた。その一方で酵母を用いた転写活性化機能の解析において、正常型タンパク質にみられる転写活性化能が変異型タンパク質には失われており、その原因はタンパク質のC末端部分が欠失したことによることが明らかになった。以上の結果から、rin変異体の果実が成熟を開始しないのは、変異によりRINタンパク質のDNA結合性は維持されるが、転写を活性化する機能を失ったことにより成熟に必要な遺伝子の転写が誘導されないためであると結論付けられた。このことは、RIN/rinタイプのヘテロ系統の果実が正常型と変異型の中間の成熟の表現型を示すのは、変異型タンパク質が正常型に対して阻害的に働くためであるという仮説を強く支持する結果である。また正常型ダンパク質が成熟開始期に発現誘導する遺伝子を同定するためにクロマチン免疫沈降法を適応して解析を行い、RINは果実細胞中において成熟期のエチレン生成に必要な遺伝子のプロモーター部に結合していることを明らかにした。これはRINが直接転写制御している遺伝子を同定した世界で初めての例である。さらに、この研究の派生成果として、果実と植物体をつなぐ果梗部分に形成される離層構造について、その形成を制御している新たな転写因子を発見した。
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化学と生物 47(7)
ページ: 465-472