研究概要 |
オオムギ縞萎縮ウイルス(Barley yellow mosaic virus, BaYMV)はポティウイルス科に属し、2種類の1本鎖RNA(RNA1,RNA2)をゲノムとして持つRNAウイルスで、大麦(ビール麦)に感染して収量と品質に甚大な影響を及ぼしている。BaYMVは病原性の違いから現在4つの系統に分類されているが、変異や組換えなどにより新たなウイルスが出現する可能性があり、その対策も大きな課題となっている。 そこで本研究では、1つ目の課題として「病原性決定因子の探索と簡易診断法の確立」を目指し、まず、BaYMV各系統の全塩基配列を決定し、分子系統解析を行った。その結果、各系統間にはCPや他の遺伝子よりもVPg間で大きな変異があることが明らかとなった。これらの成果は国際誌に発表した(Archives of Virology 153:1783-1786, 2008)。次に、迅速で簡易な系統識別法の確立に関する研究を行った。まず、近年発生が報告されている新たな系統(V型)の全塩基配列を決定し。病徴決定因子のひとつと考えられるVPg遺伝子の塩基配列を元にした系統識別法を開発した。この成果は学会において口頭発表し、論文も投稿中である。 2つ目の課題として「抵抗性遺伝子検出用DNAマーカーの構築」を目指した研究を行っている。現在、ビール麦の各品種の感染植物よりウイルス抵抗性遺伝子のクローニングとシークエンスを進めている。また、VPgとの相互作用の確認のための実験系も確立中である。
|