研究概要 |
本年度は,つる割病菌と非病原性Fusariumをキュウリに共接種したときの発病抑制効果を調べたとともに,根内での両者の感染動態を,それぞれの菌株にGFPを組み込んだ形質転換株を用いて蛍光顕微鏡下で観察した。無菌的に栽培したキュウリ(齢10日)の根につる割病菌(10^5spore/ml,5μl)のみを接種した場合,接種部位を中心とする導管褐変が認められたが,非病原性Fusarium(10^6spore/ml,5μl)を共接種した場合,導管褐変長の抑制が認められた。また,病原菌のみを接種した場合,侵入菌糸は維管束にまで到達していたのに対し,非病原菌のみを接種した場合,侵入菌糸は細胞間隙を伸長したが,維管束には到達しなかった。また,両者を共接種した場合には,根面における病原菌の菌糸伸長が抑えられた。また,根内への病原菌の感染は認められたものの,侵入菌糸は維管束に到達しなかった。さらに,病原菌を接種する24時間前に非病原菌を接種した場合,根内で増殖する病原菌量の低下が認められた。病原菌の接種部位と非病原菌の接種部位を離して接種したにもかかわらず,病原菌の根面および根内における菌糸伸長の抑制がみられたことから,非病原性Fusariumによるキュウリつる割病の抑制には,根内においては競合よりも抵抗性の誘導が大きく関与していることが示唆された。
|