研究概要 |
本研究では、主要なアーバスキュラー菌根菌種であるGlomus mosseaeと植物生育促進菌類のうち病害抑制効果の高いPhoma GS8-2を単独、同時および時間差接種したときのキュウリ立枯病に対する病害抑制効果を調べた。また、それぞれの病原および有用微生物の植物根への定着と植物体における防御関連遺伝子の転写活性を調べた。その結果、G. mosseaeとGS8-2を組合せて同時に接種した場合、単独接種よりも高い防除効果が得られることが明らかとなった。また、それぞれの有用菌を時間差で接種した場合、同時に組合せ接種した場合より、防除効果が低下した。このときの植物根への有用菌の定着は、GS8-2を予め接種したキュウリにG. mosseaeを接種してもG. mosseae単独接種の場合と同等の定着率を示したのに対し、G. mosseaeを予め接種したキュウリにGS8-2を接種するとGS8-2の定着率は単独接種の場合よりも低下した。G. mosseaeを接種したキュウリに苗立枯病菌を接種した場合、再分離される苗立枯病菌の割合が低下した。有用菌を接種した植物体における防御関連遺伝子の転写活性を調べた結果、G. mosseaeおよびGS8-2を接種した植物体において活性化が強く認められた。特に、basic chitinaseとβ-1, 3-glucanaseの発現が強く認められた。また、G. mosseaeとGS8-2を組合せ接種した場合、これらの転写活性はさらに強まった。以上のことから、G. mosseaeとGS8-2の組合せ接種における発病抑制効果の増強は、植物体における防御関連遺伝子の転写を活性化することによるものと考えられた。
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