研究概要 |
いもち病菌の接着を剥離させる能力を持つ微生物群の探索を目的として、イネ葉面由来の様々な微生物ライブラリーより選抜作業を行った。いもち病菌をはじめとする植物病原糸状菌は細胞外領域に糖タンパク質を多量に分泌し、強固な接着能力を持っている。この構成成分はコラゲナーゼにより分解されたことより、コラゲナーゼ活性を簡易的に検出できるゼラチン分解テストを用いて選抜作 業を行った。 まず、農業環境技術研究所保有のイネ葉面微生物ライブラリーを用いてゼラチン分解能力の高い菌の選抜を試みたところ、Nocardioides sp.が最も高い能力を保有していた。また、自然界より直接ゼラチン分解活性の高い菌株を選抜する方法として、神戸大学附属食資源センター圃場より分離した微イネ葉を摩砕懸濁し、そのままコラーゲン含有緩衝液にて24時間培養してからの個体群の変動を評価した。その結果、コラーゲン含有緩衝液にて培養する前にはMicrobacterium sp.を優占種とした多様な菌群が存在していたが、24時間培養後にはSphingomonas sp., Acidovolax sp.など特定の菌種が増殖しており、それら分離菌のゼラチン分解活性は総じて高かった。選抜された菌株を人工膜に接種したいもち病菌に処理してみたところ、コラゲナーゼを処理した場合に比へで、いもち病菌の剥離効果は高いものではなかった。選抜された菌の培養ろ液のゼラチン分解活性を調査したところ、活性は高くなく、酵素を分泌する条件が限られていることが考えられた。
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