平成19年度は、白かび病菌非病原性株由来ポリガラクツロナーゼ(PG)の酵母を用いた、外分泌発現系の確立と、病原性および非病原性株由来PGの予想される病原性決定構造を組み換えたキメラタンパクの発現を試みた。非病原性株由来PGの外分泌発現系は、これまで成功していなかったが、プロモーターおよびシグナルペプチドの改良により、今回発現に成功した。そこで、非病原性株由来PGの単独による病原性の有無を調べたところ、PG活性は有するものの、プロトペクチナーゼ(PP)活性が、全く認められないことが明らかとなった。この結果は、筆者の提案するPP活性が病原性の有無を左右するという仮説を裏付けるものとなった。次に、病原性および非病原性株由来PGのキメラタンパク作出であるが、両タンパクの予測立体構造から、触媒部位を挟んだ上下の構造に大きな違いが認められており、この構造の違いが、基質との結合に関わっていると予測される。そこで、非病原性由株来PGの触媒部位とその上下の部位を含んだ領域を病原性株由来PGの同領域と組み換えたキメラタンパクの作出を行った。その結果、PG活性を有するキメラタンパクの酵母を用いた発現に成功した。今後、本キメラタンパクのPP活性測定を行うことにより、PP活性(病原性)を左右する構造の解明につながると思われる。また、1アミノ酸レベルでの組み換えタンパクを作成し、病原性に関わるアミノ酸配列を決定したい。
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