研究概要 |
アブラナ科野菜類炭疽病菌はモデル植物シロイヌナズナに感染することから,病原菌-植物間相互作用を解析する上で有用な糸状菌である。これまでに本菌の感染器官分化時に発現している遺伝子についてEST解析が完了している。本解析により得られた情報を利用して本菌の感染メカニズムの解明を効率的に進めていくためには,効率の良い遺伝子機能解析実験系を確立することが重要である。昨年度の研究で申請者は,本菌の非相同組み換えに関与する遺伝子を破壊することにより,相同組み換え効率向上株の作出に成功している。相同組換えを利用した標的遺伝子の破壊には一定の長さの標的遺伝子との相同配列を含む破壊ベクターの構築が必要となるが,本菌はゲノム情報が明らかになっていないことから,より少ない情報で効率的に遺伝子破壊を行えることが望ましい。そこで本年度は,ChMUS51遺伝子破壊株において標的遺伝子破壊株の作出に必要な相同領域長について調べた。0.1kbp〜2kbpの相同領域をもつChPKS1遺伝子破壊ベクターを構築し,その遺伝子破壊効率を調べた。その結果,相同領域が長くなるにつれ,標的遺伝子破壊効率が上昇し,効率的な破壊には0.5kbp以上の相同領域が必要であることが明らかになった。また,同実験系を用いて病原性関連候補遺伝子破壊株を作出し,その性状解析を行った。ウリ類炭疸病菌,イネいもち病菌において植物との相互作用における抵抗性回避に関与すると考えられているSSD1遺伝子のオルソログについて,本菌における特異的遺伝子破壊株を作出し,その性状解析を行った。その結果,ChSSD1破壊株は一部の宿主に対して病原性の低下を示した。
|