アブラナ科野菜類炭疽病菌はモデル植物シロイヌナズナに感染することから、病原菌-植物間相互作用を研究する上で有用な病原菌である。本研究は、アブラナ科野菜類炭疽病菌のエフェクタータンパク質遺伝子の探索を目的として行った。昨年度までにバイオインフォマティクスの手法を用いることにより、アブラナ科野菜類炭疽病菌の感染器官形成時cDNAライブラリの配列情報から、感染器官から植物細胞への分泌が予想される49個の候補遺伝子の選抜を完了していた。当該年度は、これら49個の候補遺伝子の中から実際にエフェクターとして機能するものを選抜するために、相同組み換えを利用した標的遺伝子破壊系、ベンサミアーナ植物を用いた一過的遺伝子発現系の2つのアプローチから実験を行った。標的遺伝子破壊系については、昨年度までに遺伝子破壊ベクター内の反復配列の相同組換えを利用した新規の標的遺伝子破壊法であるDRGT(direct repeat gene targeting)法を構築していた。そこで、本法を用いてハイスループットな遺伝子ターゲティング株の作出を試みていた。しかしながら、その後の検証によりDRGT法で作出した株は形質が不安定になることが判明したことから、本実験系による選抜を中断した。一過的遺伝子発現系については、ジャガイモXウィルス-based発現ベクターpSfinxを利用した。候補遺伝子の完全長cDNAをそれぞれpSfinxのT-DNA領域に挿入し、一過的遺伝子発現ベクターを構築した。アグロバクテリウムに導入後、接種によりベンサミアーナ植物での一過的遺伝子発現を行ったが、49個の候補遺伝子の中に、壊死斑形成を誘導するものは見られなかった。
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