研究概要 |
申請者は、カイコ(Bombyx mori)を対象として、その異物代謝に関与する解毒酵素群について研究をすすめている。代表的な第二相解毒酵素であるグルタチオン転移酵素(GST) は、生体外異物ならびに内因性の求核化合物に還元グルタチオンを抱合し、体外今の排出を促進する。GST は遺伝子ファ年リー(class)を形成しており、複数のアイソザイムが存在することが分かっている。申請者は、これまでdelta-classおよびsigma-classに属するカイコGSTを同定した。本年度は、新たにカイコより2種のGSTのクローニングに成功した。それらの中、一種のGSTの配列決定を行い、それをもとに系統樹を作製した。その結果、得られた新規GSTはzeta-classGSTに高い相同性を有していることが明らかとなった。本酵索(bmGSTZ) の組換えタンパク質の大量発現系を大腸菌を用いて構築し、さらに電気泳動的に均一になるように精製法を確立した。精製bmGSTZの基質特異性を反応速度論的に解析したところ、生体外異物1,2-ジクロ自-4-ニトロベンゼンおよび内因性の脂質過酸化物4ヒドロキシノネナルに対してGSH転移活性を有していた。また競合阻害アッセイ法によりbmGSTZは農薬フェニトロチオン、パーメスリンそしてヂルタメスリンと親和性を有することが見いだされた。以上のことより、bmGSTZは生体外異物代謝ならびに膜脂質の酸化的障害の修復に関与することが示唆された。 GST酵素群の発現誘導をタンパク質レベルで解析するため、カイコ精巣ならびに皮膚中より粗タンパク質を調製し二次元電気泳動法にて解析した。泳動後、それぞれ50個のスポットを切り出した後、トリプシン消化ならびにMALDI-TOF/MS分析を行い、NCBIおよびSWISS-PROTの各データベースからタンパク質を同定した。その結果、カイコ精巣ならびに皮膚タンパク質を再現性よく分離できる方法を確立した。
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