研究概要 |
イネ(Oryza sative L. cv Notohikari)においてRubiscoの小サブユニットをコードするOsRBCS2遺伝子をown promoterの制御下で過剰発現させることで成熟葉におけるRubisco量を増強した形質転換体を材料に、葉の発達に伴うRubisco量およびRBCS multigene familyとRBCL遺伝子のmRNA量の変化を調べた。 Rubisco量は成熟葉である最上位完全展開葉で最大となり, 形質転換体では単位葉面積および葉身窒素量あたりで野生型の1.2倍に増加していた. Rubisco量は下位葉において, 葉の老化に伴い徐々に減少したが, 両者の間の差はなくなった. RBCS mRNA量は展開中の若い葉において最大となり、以降急激に低下し、老化葉においては非常に低くなっていた。形質転換体ではOsRBCS2mRNA量が葉齢によらず野生型の7倍以上に増加していた一方で、他の分子種には変化が認められなかった。このため、形質転換体の全RBCSmRNA量は、葉齢によらず野生型の2倍以上に増加していたが、老化葉においては野生型の最大値と比べ非常に低いものであった。葉の一生を通じたRBCL mRNAの変動はRBCSのそれと同様な傾向を示した。形質転換体では葉齢によらず野生型よりも若干高くなる傾向にあったが、老化葉においては全RBCS mRNA量と同様に非常に低くなっていた。 以上のことから、形質転換体イネの比較的若い葉ではRBCSの過剰発現に対しRBCLが協調的に応答することでRubisco量が増加していた一方で、老化葉では両遺伝子間の協調は認められたもののmRNA量の低下のためRubisco生合成の活性が著しく低下していたことによりRubisco量が増加していなかったものと考えられた。
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