研究概要 |
田畑輪換作付体系の土壌環境変化に,ダイズ根粒菌がどのような生存戦略で対応しているかを明らかにし,根粒菌の生態を把握するために,水田土壌と畑地土壌における土壌微生物群集構造解析と根粒菌の遺伝的多様性を比較した。供試土壌は秋田県内における重粘土の水田,畑地および水田転換畑の土壌を用いた。転換畑は土壌の透水性が悪く,ダイズ栽培期間も過湿・還元状態にある。各圃場から深度別に土壌を採取して,16S-rDNA,16s-23s-rRNAITS領域をPCR増幅し,土壌微生物群集構造と根粒菌の遺伝的多様i性をDGGE法で調べた。 供試した3つの圃場は,非常に隣接した圃場である。しかし,これらの圃場に生息する土壌真正細菌類の群集構造は異なっていたことから,田畑輪換を行うと,土壌中の真正細菌の群集構造が変化することが明らかとなった。水田圃場は,灌水と落水により土壌が還元,酸化を繰り返すため,土壌環境の変化が大きい圃場である。転換畑の土壌中には,変化する土壌環境に適応する,様々な真正細菌類が生息しているため多様性が増加したと考えられた。 転換畑,連作畑における優占しているダイズ根粒菌の系統は同じであり,両圃場とも主要な2系統が多く生息していることが分かった。また,それとは別に,非常に生息数が少ないと思われる根粒菌株の存在も確認された。転換畑および連作畑の下層(深度17cm以下)で見られる系統は連作畑の上層(深度16cm以上)ではほとんど検出されず,転換畑の根粒菌は連作畑に比べて遺伝的多様性が高かった。転換畑の土壌は,水田時に灌水や落水によって,酸化還元を繰り返しており,それぞれの土壌環境に対応した根粒菌株力§生息しているため多様性が増したと考えられた。また,増加が見られた菌株は,還元的な環境に適応した根粒菌株であると推察された。
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