研究概要 |
<背景と目的> <背景と目的> 日本の黒ぼく土は表層に多量の有機物を集積する。その炭素集積能は、世界的に見てもきわめて高いものである。黒ぼく土の腐植酸中には多量のアルミニウム(Al)が含まれる特徴があることから、高い腐植集積能にAlの存在が深く関わっていると考えられる。一方、土壌中に普遍的に存在し、Alと同じ6配位のイオンでありながら、鉄(Fe)はAlほど腐植物質の集積に寄与しない。本研究では、AlとFeが関与する腐植酸集積メカニズムを明らかにすることを目的とした。 <実験方法> 腐植酸-Al・Fe複合体の^<13>C、^<27>Al固体核磁気共鳴分析、Al, Fe K吸収端X線吸収スペクトル分析、熱重量分析、加熱時発生ガス質量分析をおこなった。 <結果と考察> 腐植酸のカルボキシル基の80%に相当するAl、Feを添加して合成した腐植酸-Al・Fe複合体のX線吸収スペクトル微細構造を解析し、Al、Feが腐植酸錯体として存在するか、鉱物相を形成しているかを判別した。pH4、反応時間24時間で合成した腐植酸-Al・Fe複合体中のAlとFeは100%が錯体として存在していた。一方、反応時間180日で合成した複合体中のAlは100%が錯体であったのに対し、腐植酸-Fe複合体中のFeの87%が錯体、13%がフェリハイドライト(鉄鉱物)であった。さらに、加熱時発生ガス分析の結果、AlやFeと結合していないフリーの腐植酸に比べ、Al-腐植酸複合体からの腐植酸分解に伴う二酸化炭素発生温度が高く、金属と複合体を形成している方が、腐植酸の分解が遅い傾向があることが示唆された。腐植酸の強い錯形成能により、Alの鉱物相への形態変化が遅れること、腐植酸-Al複合体が安定であることが、黒ぼく土が高い腐植酸集積能を持つ要因として重要であることが示された。
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