研究概要 |
真正子嚢菌網に属する糸状菌は、多数の細胞が連なった菌糸として生育する。隣接する細胞は隔壁により仕切られ、そこにあいた小さな穴である隔壁孔を通じて細胞間連絡を行っている。真正子嚢菌網に属する糸状菌に特異的に存在するオルガネラWoronin bodyは、通常隔壁近傍に観察されるが、菌糸損傷時には隔壁孔をふさぎ、隣接する細胞への溶菌の伝播を防ぐ働きを有する。これまでに研究代表者は、Woronin body形成に必要なAohex1遺伝子を麹菌Aspergillus oryzaeよりクローニングした(Marayama et al., 2005)。AoHex1タンパク質はペルオキシソーム局在配列を有することから、Woronin bodyがペルオキシソームの派生器官であることが考えられた。研究代表者はペルオキシソームの分裂・増殖に必要なPex11に着目し、A. oryzaeよりPEX11相同遺伝子を2つ見出した。それぞれAopex11-1、Aopex11-2と命名し、これらの遺伝子破壊株を取得した。Aopex11-1遺伝子破壊株では、炭素源がオレイン酸のときに生育阻害が認められ、ペルオキシソームの数が減少するとともに肥大化していた。このことから、AoPex11-1がペルオキシソームの分裂・増殖に関与することが確認された。さらにAopex11-1遺伝子破壊株では、Woronin bodyの機能が低下し、ペルオキシソーム膜に結合して分化できないWoronin bodyが観察された。一方、Aopex11-2遺伝子破壊株では、ペルオキシソームおよびWororiin bodyについて変化は観察されなかった。以上の結果により、AoPex11-1はWoronin bodyの分化に関与することを明らかにした。
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