研究概要 |
Corynebacterium glutamicum由来のアスパラギン酸キナーゼ(AK)のα_2β_2サブユニットからなるヘテロ複合体の調製法を確立し、結晶化に成功した。昨年度我々が決定したβサブユニットの構造および報告されているMethanococcus jannaschii由来アスパラギン酸キナーゼの触媒ドメインの構造を用いた分子置換法により、2.4A分解能のAK/Lys, Thr複合体の立体構造を決定することに成功した。スレオニンがAKに存在する予想される4つのサイトすべてに結合しているのに対し、リジンは4つの予想サイトのうち2か所に結合していた。リジン結合サイトの部位特異的変異体の解析の結果、4つのサイトはアミノ酸配列上等価であるにも関わらず、実際にリジンが結合していたサイトのみが調節に関与するという興味深い知見を得た。また、この複合体は活性中心を構成するアミノ酸残基が触媒に適した位置にないことから、リジン、スレオニンによるシグナルが活性中心構造を不活性型に変化させるという、アロステリックモデルを証明することができた。 触媒ドメイン内にランダム変異を導入し、AEC(2-アミノエチルシステイン)耐性(フィードバック阻害耐性)変異体をスクリーニングにより取得した結果、触媒ドメインと活性調節ドメインの接触面に存在するアミノ酸残基がリジン/スレオニンによるシグナルを活性中心へと伝達する役割を担っていることを示すことができた。
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