環境中に存在する微生物のほとんどが培養できないことが知られているが、その様な微生物が培養可能になることによる恩恵は計り知れない。近年、二酸化炭素を要求する細菌がいることが知られ始め、昨年度本課題でも二酸化炭素要求性細菌の単離に成功している。 今年度本課題では、昨年取得した二酸化炭素要求性細菌の同定を行い、得られた株がNocardioides属、Lctococcus属、Pelomonas属の細菌であることを明らかにした。既知のいくつかのNocardioides属細菌はアルカリ環境から分離されており、その際に炭酸ナトリウムを用いてアルカリ側にpHを調製した培地を使用している。つまり、培地中に炭酸イオンが多量に存在する状況となっていることから、そのようにして単離された菌株の中にも二酸化炭素を要求するものが含まれている可能性が高い。また、Lactococcus属が単離されたことから、乳酸菌用の培地を用いてさらなるスクリーニングを試みた。しかし、昨年度と同様に一時的に二酸化炭素を要求する菌株は得られるものの、再現よく二酸化炭素を要求し続ける菌株は得られなかった。 さらに、二酸化炭素を要求するこれらの菌株が酸素を要求するのかを観察するために嫌気ジャーにて培養を行ったが、いずれも生育しなかった。二酸化炭素を供給して培養する場合、90%の空気に10%の二酸化炭素を加えて培養していたため、いわゆる微好気性細菌とは異なり、これらの細菌は酸素と二酸化炭素の両方を要求していると考えられる。
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