研究概要 |
P.methanolicaは2種類のサブユニットModlpおよびMOd2pから成る9種のAODアイソザイムを持つ。今回,P.methanolicaのAODアイソザイムを介した酸素によるメタノール代謝制御について解析を行なった。最初に,AODアイソザイムの酸素に対する親和性について解析したところ,MOd1pは酸素に対して低Kmを示し,MOd2pは高Kmを示した。さらには,AODアイソザイムの酸素に対する発現応答について解析を行なった。酸素が存在しない嫌気状態では,AODアイソザイムの発現は全く見られないものの,低酸素濃度下においてはMOd1pが支配的に発現し,酸素濃度の上昇にともなってMOd2pの発現が支配的になっていった。一方,メタノール代謝におけるもうひとつの酸素消費の場である呼吸鎖活性とAODアイソザイムの発現制御との関係について解析を行なった。呼吸鎖活性を阻害することにより両者の活性バランスを崩すとAODアイソザイムの発現は低下し,呼哩塾の高胆害下ではMOd1pが支配的に誘導され,その阻害率を下げるにつれてMod2pの発現比か高くなった。本発現パターンは酸素濃度に対する挙動と非常に類似しており,呼吸鎖が酸素濃度を感知し,自身の活性に合わせてAODアイソザイムの発現を何らかの形で制御することでメタノール代謝を巧妙に制御しているものと思われる。つまり,AODと呼吸鎖かそれぞれ局在するペルオキシソームとミトコンドリアの間でメタノール代謝を制御するための,いわゆる「オルカネラクロストーク」が何らかの形で行なわれていることが考えられる。
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