研究概要 |
Yersinia intermedia培養上清中の耐熱性Staphylococcus aureusバイオフィルム(BF)形成抑制因子は、限外ろ過を行うことにより、分子量3,000以下の物質であることを明らかにすることができた。次に、限外ろ過サンプルをLC/MS/MS解析を行ったところ、幾つか小さいながらも特徴的なピークを観察することが出来た。そのため、さらに精製を進めることを目的とし、活性物質を強く吸着可能な逆相カラムを見つけることを目指して検討を行ったが、残念ながら、現在までに同定には到っていない。ただ、多くの腸内細菌群の微生物がS. aureusのBF形成を抑制するので、それらの微生物が一般に産生する物質ではないかと考え、インドールの効果について検討した。その結果、2,000μMの濃度では、インドールはS. aureusのBF形成抑制活性を有することを明らかにすることはできたが、それはE. coliやγY. intermediaの生産量よりも高かった。次に、Y. intermedia同様、E. coliの培養上清もS. aureusのBF形成抑制活性を有するので、E. coliのランダムトランスポゾン変異株ライブラリ-を構築し、16,704株のスクリーニングを行ったものの、残念ながら、現在までに当該活性を有する株は得られていない。加えて、S. aureusを単独及びY. intermediaの培養上清中にて培養を行い、それぞれからタンパク質を抽出して二次元電気泳動を行った後、特徴的な発現をしているタンパクについてLC/MS/MS解析を行った結果、グルコースの取り込みやストレス応答に関与するタンパクなどが、培養上清中で培養した際に強く発現していることが明らかになった。さらに、数十種類の食品添加物について、S. aureusのBF形成抑制に関してスクリーニングを行ったところ、特に、界面活性剤として使用されているショ糖脂肪酸エステルが極めて高い活性を有していることを発見した。
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