ヘミセルロースの側鎖を分解する酵素群(アクセサリー酵素)は数多く存在し、興味深い研究対象である。本研究では、Aspergillus属またはStreptomyces属由来の糖質関連酵素(主にヘミセルラーゼ)のうち、立体構造未知で新規性の高いものを対称に、立体構造解析を軸に機能解析も平行して行う。Aspergillus属由来の立体構造未知なヘミセルラーゼのうち、最も新規性の高いアクセサリー酵素であるアセチルキシランエステラーゼをPichia酵母で発現し、結晶化を行った。その結果、分解能1.9Aで基質フリーの構造決定に成功した。活性中心残基間の相互作用が明らかになり、基質のアセチル基が結合すると予想されるポケットが存在した。この酵素の属するファミリーでは初めての立体構造であり、構造の新規性は極めて高い。また、アセチルキシランエステラーゼとフェルラ酸エステラーゼの基質特異性の構造基盤が明らかになったことから、両酵素の間の機能変換が可能になった。さらに、Aspergillus属由来のアクセサリー酵素のうち、新規なフェルラ酸エステラーゼの結晶化に向けて、Pichia酵母での発現に着手した。本酵素の属するファミリーも立体構造が報告されていないため、構造新規性が極めて高い。一方、Streptomyces属由来のヘミセルラーゼのクローニングは完了したが、発現系を構築した結果、いずれも不溶性画分に発現した。可溶性発現条件の探索が必要である。
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