研究概要 |
グリコーゲンのリン酸化酵素はグリコーゲン合成時に多く発現すると考え,はじめに各種大腸菌がどのような条件でグリコーゲンを蓄積するか調べた.遺伝子工学で良く用いられているJM109株やBL21株はグリコーゲンをほとんど蓄積しなかったため,酵素精製の材料としては不適であると判断した.一方,Kornberg培地中で培養したBW25113株は,培養24時間後に最大量のグリコーゲンを蓄積した.BW25113株から超音波破砕および超遠心法により調製したグリコーゲンを酸加水分解し,グルコース6リン酸脱水素酵素を用いて結合リン酸量の測定に供したところ,2.0nmol/mgとリン酸化されていることが明らかとなった.したがって,本大腸菌はグリコーゲンリン酸化酵素を生産していることが予測された.また,デンプンのリン酸化酵素であるGlucan water dikinaseを本大腸菌に導入したところ,グリコーゲンの結合リン酸量が約3倍に増加したことから,このように調製したグリコーゲンは酵素活性測定の基質としても利用できると判断した.現在,この大腸菌の超音波破砕液から各種クロマトグラフィーによって精製を行っているが,酵素活性の測定方法を改善する必要があると考えられ,タンパク質の同定には至っていない.また,BW25113株は系統的な遺伝子破壊ライブラリーであるKeio collectionの親株であるため,場合によってはこのコレクションを用いて非リン酸化グリコーゲンを蓄積する大腸菌を探索することも可能ではないかと考えている.
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