研究課題
甘味タンパク質ソーマチンの甘味発現部位を明らかにするため部位特異的変異体の作製を行った。ソーマチンI遺伝子を新たに取得し、酵母由来の分泌配列を用いて酵母Pichia pastorisで発現させた。その結果、組換えソーマチンは植物ソーマチンと同様に甘味を呈したが、N末端のプロセッシングがヘテロであり、N末端に余分に数残基のアミノ酸が付加していた。そこで均一な組換え体を得るため、酵母の分泌配列をソーマチン自身が有するシグナル配列に変え発現を試みた。その結果、ソーマチンの分泌量とともにN末端のプロセッシングの問題も改善でき、均一な組換え体ソーマチンを取得できた。この発現系を用いてソーマチンの塩基性アミノ酸残基のアラニン置換を行った。官能検査により甘味に与える影響を検討したところ、クレフト面に存在する塩基性アミノ酸残基の変異体の多くは甘味閾値が上昇した。その中でもR82A,K67Aの甘味閾値の上昇は顕著であった。これまでソーマチンの甘味発現にはアルギニン残基は寄与しないと報告されていたが、本研究によりはじめてアルギニン残基が甘味発現に関わることを明らかにした。また、先行化学修飾実験において重要性が指摘されていたK106については、変異体K106Aが甘味閾値にあまり影響を与えなかった。このことは、かさ高いピリドキサールリン酸の官能基が近傍に存在するR82の側鎖に影響を与えたものと考えられた。甘味閾値に影響を与えたK67,R82の2残基について更に検討を行い、K67側鎖の塩基性度が甘味発現に重要であること、R82では側鎖の塩基性度のみならず、側鎖の構造的要因も重要であることを明らかとした。
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ページ: 708-714
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