Burkholderia cepacia由来リパーゼの光学選択性を解析するために、本酵素の基質である3-phenylbutyric acid p-nitrophenyl esterのR体、S体、およびラセミ体をそれぞれ合成した。キラルカラムによるR体およびS体の3-phenylbutyric acid分離条件を決定し、リパーゼ反応産物の分析を行った。p-nitrophenyl butyrateの分解活性で精製酵素の本基質に対する酵素活性を評価し、野生型及び変異型で酵素活性に大きな差が無いことを確かめた。また、変異酵素においてS選択的であった光学選択性がR選択的に変化していることがわかった。 昨年度、結晶構造の得られなかった野生型のBurkholderia cepacia由来リパーゼおよび、光学選択性の改変された4重変異体4種類について、発現時の分解を抑制して精製したところ、結晶化に適した高純度精製表品を得ることに成功した。本酵素を用いて結晶化実験を行ったところ、20-30%のイソプロパノールを共沈剤として用いた条件で良質な結晶がえられ、X線回折データの取得を行った。得られたX線回折データの分子置換法による解析を行った。構造データをもとにしたモデルを作成し、変異体と野生型で基質結合部位を比較したところ、基質のフェニル基が結合すると思われる位置にあるフェニルアラニン側鎖の除去と、基質のメチル基が結合する部分の疎水性アミノ酸側鎖の体積が基質の光学選択性に影響していることが示唆され、機能改変に向けたタンパク質工学的改変の方針を示すことができた。
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