本研究では、出芽酵母の分化過程として位置づけられる減数分裂の進行において、クロマチン構造制御が果たす役割について明らかにすることを目的としている。このため、クロマチン構造制御に働く因子群のうち、特に酵母の生育に必須なRSC複合体の減数分裂における生理機能について明らかにすることを目指す。本年度は、この目的を遂行するために必須な解析手法の確立に取り組んだ。まず、減数分裂におけるRSC欠損時の表現型解析を行うため、この過程の特定の時期にRSCの発現を速やかに抑制する手法について検討した。RSCの活性サブユニットであるNps1に特異性の非常に高いtobacco etch virus(TEV)由来プロテアーゼの認識部位を付加し、同時にTEVプロテアーゼを発現させることにより、RSCの機能発現を速やかに抑制することに成功した。減数分裂遺伝子のプロモーターを利用してTEVプロテアーゼの発現時期をコントロールすることにより、減数分裂の特定の時期にRSCの機能発現を抑制できると考えられる。次に、出芽酵母の系で遺伝子間の相互作用を網羅的に解析するために開発されたSGA(Synthetic Genetic Array)法を改良し、減数分裂時にRSCと合成的に働く遺伝子を検出するための手法を開発した。方法として、MFA1p::HIS3とMFα1p::URA3を連結した融合遺伝子をnps1変異株に組み込み、この酵母株を親株として破壊株ライブラリと掛け合わせて得られるヘテロニ倍体を胞子形成させ、効率よく各接合型の二重変異株を検出できるようにした。生育可能な両接合型の二重変異株を掛け合わせて得られるホモニ倍体株を効率的に選択し、二重変異株の胞子形成の可否を網羅的に検出できるようにした。来年度は、これらの解析手法に基づいて、減数分裂過程におけるRSCの生理機能を詳細に調査する。
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