トマト果実が成熟すると生成されるesculeoside Aの生成機構について、調べた。Esculeoside Aは、トマチンより生合成されることが推測されている。そこでまず、その中間体の存在をLC-MSおよびNMRにより確認した。その結果、トマチンからesculeosideAへの変換は、3段階で起こることが分かった。トマチンとesculeosideAでは、23位の絶対構造が逆になるが(トマチンがR、esculeosideAはS)、中間体ではいずれも、S体として検出され、第一段階で、23位の変換が起こることが推測された。 また、esculeoside Aの生成を野生種トマトで調べたところ、種によって起こるものと起こらないものに分けることができた。次に、エチレン受容・生成変異体の比較、およびトマトをエチレン暴露することにより、トマチンからesculeosideAへの変換には、エチレンが関与していることが分かった。特に定量データから、最終段階の配糖化がエチレンの影響を強く受けることが考察された(J. Agric Food Chem. 2009掲載)。 次に、この配糖化メカニズムを調べるため、配糖化酵素のクローニング・機能同定を試みた。基質となる中間体は市販されておらず、新規な化合物であるため、大量のトマト果実から単離精製した。一方、候補酵素遺伝子については、マイクロトム果実を用いて、成熟4段階でのマイクロアレイの結果から候補を絞り込んだ。果実特異的でかつ、成熟に伴い発現が上昇する配糖化酵素遺伝子を4種見出し、タンパク誘導、酵素活性により調べた。
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