【研究の目的】四種のチャワンタケ類(ツバキキンカクチャワンタケ、シロヒナノチャワンタケ、アネモネタマチャワンタケ、スギエダ黒点枝枯病菌)に着目し、子実体や培養菌糸体から、生理活性物質の探索することを目的としている。 【19年度の研究実績概要】ツバキキンカクチャワンタケ:野外で採取した子実体のメタノール抽出物について、抗菌活性、殺ブラインシュリンプ活性試験を行った[1mg(抽出物)]。その結果、活性は見られなかった。また、子実層から射出された胞子から発芽した菌糸を用いて、液体培養を行い、その培養抽出物ついても、先と同様に活性試験を行ったが、不活性であった。平成20年度はさらにツバキキンカクチャワンタケの子実体を多く採集し、本菌で特異的に生産される物質を探索する予定である。 シロヒナノチャワンタケ:ブナの殻斗に生じた子実体のメタノール抽出物について、TLC上での指標を基に生産されている物質を調査した。UV吸収を持つ特徴的な物質のスポットが認められた。HPLCを駆使して、その物質を分離(>0.2mg)した。一方、シロヒナノチャワンタケの射出胞子から発芽した菌糸の培養物には、抗菌活性が見られた。また、植物に対する影響を調べるためにレタス幼根に対する生長阻害活性試験を行ったところ、阻害活性を示した(1mg)。現在、その活性物質の構造を明らかにしている。 なお、平成19年度はスギの落ち枝に子実体を形成するスギエダ黒点枝枯病菌とニリンソウの近くに生息するアネモネタマチャワンタケは、天候等の都合により採取することができなかった。これらのチャワンタケ類もツバキキンカクチャワンタケ、シロヒナノチャワンタケと同じく、これまでに生理活性物質の報告がないため、有用な物質が含まれると考えられる。
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