【研究の目的】四種のチャワンタケ類(ツバキキンカクチャワンタケ、シロヒナノチャワンタケ、アネモネタマチャワンタケ、スギエダ黒点枝枯病菌)に着目し、子実体や培養菌糸体から、生理活性物質の探索することを目的としている。 【20年度の研究実績概要】ツバキキンカクチャワンタケ : 野外で採取した子実体のメタノール抽出物について、抗菌活性や植物幼根の生長阻害を指標に、化合物1を単離した。NMRを中心とした構造解析の結果、1はアガリチック酸のモノメチルエステル誘導体であった。本物質は、天然からは初めでの報告であった。また、子実層から射出された胞子から発芽した菌糸を用いて、液体培養し、その培養抽出物ついては、1は生産されていなかった。なお、ツバキキンカクチャワンタケは、ツバキ花腐菌核病菌の完全世代である。そのため、今後、本物質1のツバキ花腐菌核病の初期症状である斑点を示すかどうか調べる必要ある。 シロヒナノチャワンタケ : シロヒナノチャワンタケは、落下したブナの殻斗にのみ、小さな子嚢盤を形成する。シロヒナノチャワンタケとブナとの関わりについては、興味が持たれているものの、明らかになっていない。そこで、本菌の子実体や培養菌糸体から抗菌作用などを指標に活性物質を探索した結果、既知のノルコーレンソイック酸(2)を同定した。また、本物質2は殻斗から分離される菌類の生育を阻害したことから、シロヒナノチャワンタケは殻斗に優先的に生育している可能性を示した。 アネモネタマチャワンタケ : ニリンソウの近くに生息するアネモネタマチャワンタケを探索したが、今回、研究に十分な量を採取できなかった。しかし、胞子発芽菌糸の培養と菌核形成に成功しているため、今後、それらを用いた活性物質の研究が可能である。なお、平成20年度はスギエダ黒点枝枯病菌に関しては、天候等の理由により採取が不可能であった。
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