研究概要 |
これまでに、[^<13>C_6]グルコースおよび^<13>CO_2由来の^<13>Cがシアナミドに取り込まれるのに対し、[2,3-^<13>C_2]ピルビン酸由来の^<13>Cの取り込みは見られないことを確認している。今回、[2,3-^<13>C_2]ピルビン酸ナトリウム(56.0mM)を含む水耕液を与えてヘアリーベッチ植物体地上部を24時間培養した。培養後、メタノール抽出液を分画して得た酸性有機物画分を減圧濃縮し、TMS化した。GC-MSを用いてコハク酸、フマル酸、およびシアナミドの各TMS化物の分析を行い、^<13>Cの取り込みを調べた。[2,3-^<13>C_2]ピルビン酸由来の^<13>Cは、クエン酸回路上のコハク酸やフマル酸へ顕著に取り込まれたことから、植物体内では正常に代謝される一方、シアナミドには取り込まれないことが示された。このことからシアナミド分子中の炭素原子は、解糖系においてピルビン酸よりも上流に位置する炭水化物から派生する経路を経て、シアナミドに取り込まれていることが明らかとなった。また、植物体地上部を上方から葉を等しく2枚ずつ含むよう3つの部位(上部・中部・下部)に分け、各部位に含まれるシアナミドを定量すると、上方の部位ほど高濃度でシアナミドが含まれていた。また、各部位を^<15>N標識した窒素源を含む水耕液で5日間培養すると、^<15>Nの取り込み率は下方の部位ほど高い値を示した。これらの結果から、シアナミドは主に地上部下方の葉で生合成された後に、上方に輸送されている可能性が示された。0.1%のTween 20を含む[^<15>N_2]シアナミド水溶液(114mM)を地上部下部の2枚の葉に塗布し、24-48時間培養した後に、中部および上部への[^<15>N_2]シアナミドの移動を調べた。中部および上部の標識体存在率は、培養時間の経過とともに有意に増加した。この結果は先述の仮説を支持している。
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