研究概要 |
これまでに調べた553種の高等植物の中で、ナヨクサフジVicia villosa subsp. varia、クサフジV.cracca L.、ニセアカシアRobinia pseudoacacia L.の3種のみが、すでに報告したGCMSを用いた分析方法において定量限界値である1μg/g新鮮重以上のシアナミドを含んでいた。この定量限界値は植物中の微量成分を測定するには高いことから、他の植物にも微量のシアナミドが含まれる可能性は検討できなかった。そこで、定量限界値をおよそ3桁向上させることを目的とした。 従来、2g新鮮重の植物体粗抽出液に20μgの[^<15>N_2]シアナミドを内部標準物質(IS)として添加し、シリカゲルカートリッジカラムにて精製したサンプルをGCMSにて分析する方法を用いていた。このとき、ISに対する天然物の[M]^+イオンピーク面積が10%となる量が定量限界値であった(1μg/g新鮮重)。今回、従来の1/100である200ngのIS添加による分析を可能にするため、主に以下の3点を改良した。(1)ISを添加した粗抽出物水溶液をODSカラムカートリッジにて精製し、その水溶出区に含まれるシアナミドを酢酸エチルに転溶させることで、共存する爽雑物を減少させた。 (2)感度を向上させるため、装置をShimadzu QP5000からQP5050に変更した。(3)[<15>^N_2]シアナミドと比較して試薬中に含まれる非標識体の存在比が1/10程度である[^<13>C,^<15>N_2]体にfSを変更し、微量の天然シアナミドの検出を可能にした。ISに対する天然シアナミドのイオンピーク面積が5%となる量を定量限界値とした(5ng/g新鮮重)。 シロイヌナズナ等において微量のシアナミドが検出されれば、生合成前駆体や代謝物を研究する目的に適した材料となるため、現在、その可能性を検討している。
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