研究概要 |
I) MCLV 3の微量定量系の確立 アミノ酸12残基からなる生理活性ペプチドMCLV 3の粗精製法について詳細な検討を行った。MALDI-TOF MSを用いたMCLV 3の微量定量系を確立する上で一番の問題点は、夾雑物によるイオンサプレッションにより、MCLV 3の検出が困難になるという点であることが明らかになった。種々の検討の結果、カルスの培養上清を陽イオン交換カラム、逆相カラム、2段階のHPLCで精製することにより、イオンサプレッションの原因となる夾雑物を取り除き、MCLV 3を高感度で検出できることを明らかにした。 また、定量のための内部標準についてはMCLV 3と分子量は同じだがプロリン残基の水酸化の位置が異なる4, 9-Hyp-MCLV 3を用いて検討を行っていたが、MCLV 3の粗精製法が多段階となり、特に最終段階のHPLCにおいて両ペプチドの保持時間が異なっていたため、内部標準として不適と考えられた。そこで内部標準について再検討を行い、MCLV 3のグリシン残基に、安定同位体である^<13>Cを2原子導入したペプチド([^<13>C_2]-MCLV 3) を合成し、これを内部標準として用いることにした。新たにMALDI-TOF MSのアイソトープパターンからMCLV 3と内部標準の存在比を計算するソフトウェア(Isomatch) を導入することにより、カルス培養上清に含まれる50-1000fmolの微量のペプチドの定量が可能になった。 II) MCLV 3の生合成における、培地中の植物ホルモンの最適条件の検討 現在、前段で確立した微量定量を用いて、カルス培養上清中のMCLV 3の定量を行っている。予備的な結果からは、培地中の植物ホルモン濃度によって、生産されるMCLV 3の量が変化することが示唆されており、今後さらに詳細な解析を行う予定である。
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