近年、神経変性疾患や老年性認知症は大きな社会問題になっており、その予防や治療に関する研究が進められている。特に神経成長因子(NGF)などの神経栄養因子の作用を代替・増強する化合物の探索が行われている。 本研究課題では、NGFの作用を増強する化合物を特に食品に含まれている成分から見出し、その機能性化合物の作用機構を分子レベルで明らかにすることを目的としている。 平成19年度は、ラット副腎髄質褐色細胞腫PC12細胞を用いたNGF増強作用を評価するアッセイ系の構築を行った。この系を用いて、様々な野菜や茶類、果実類について評価を行ったところ、アブラナ科に属する野菜類に強い活性を見出した。なかでも沢ワサビに強い活性が認められた。そこで、ワサビの酢酸エチル抽出物について、シリカゲルカラムクロマトグラフィーによる粗精製ののち、高速液体クロマトグラフィーによる精製、そしてNMRによる化学構造解析を行ったところ、6-メチルスルフィニルヘキシルイソチオシアネート(6-HITC)がその活性本体であることを突き止めた。実際6-HITCをPC12細胞に投与するとNGFの作用を濃度依存的に増強することが確認された。今後、6-HITCの細胞内における作用メカニズムの解明を推進する予定である。
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